2022年07月04日 からだの情報

ちょっと気になる論文をザックリと解説:下肢の筋肉内脂肪と心不全の関係

今回ご紹介する論文はJACC Heart Failureに最近掲載されたものです。

下肢(大腿)の筋肉内脂肪量が多いほど心不全発症リスクが増す、というもの。
ちょっと細かく見ていきましょう。

対象年齢70~79歳(2399人の心不全がない方)を対象に平均12.2年観察し、下肢大腿の脂肪量と心不全発症との関係を調べました。下肢大腿の脂肪量はCTで測定し3群に分けて比較しています。脂肪は筋肉内脂肪と筋肉間脂肪に分けられますが、筋肉内脂肪と心不全発症に関係性が認められ、筋肉内脂肪が多いほど、心不全が増す(1.34倍)というものでした。

著者も論文内で述べていますが、観察研究であるため実際どの程度関係があるのか(因果関係)は何とも言えないと思います。潜在的に心不全になりやすい人が徐々に体力が低下し、下肢筋肉の脂肪が増えるのか、それとも下肢筋肉の脂肪が直接的に心不全発症に関係するのかが十分に証明されていないためです。もちろん今回の研究では年齢に始まり、高血圧や糖尿病など既存の心不全リスクを補正した上で検討していますが、それでも因果関係を結論付けることは難しいと思います。ただ、個人的な感想としては、下肢筋力が低下している人は心不全のコントロールに難渋するという印象があり、何らかの関係はありそうに思えます。

筋力低下による活動度の低下は“サルコペニア”という言葉で表されると思いますが、筋肉量の低下や筋肉内脂肪は脂質代謝やインスリン抵抗性、炎症性サイトカインの増加と関係しているとされており、心不全発症の重要な因子と考えられています。今回は下肢筋肉内脂肪量を検討していますが、脂肪は内臓にも広く分布しており、内臓脂肪の方が心不全発症に強く影響しているかもしれないということも考えなければいけません。

どの程度関係性があるのかは不明ですが、適切な代謝を維持するため、適正な筋肉を維持し、脂肪を減らすということは重要と思われます。心臓リハビリテーションの心不全再発予防効果は実証されていると思いますが、どのようなトレーニング内容がより良いのか?自身でできる運動はどのようなものが良いのか?発症そのものを減らすことが可能なのか?といったより臨床に還元できる検討が必要と思われます。

参考文献
JACC Heart Fail. 2022 Jul;10(7):485-493.

中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創

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