千里の道も一歩から
年齢を経ると徐々に活動度が低下してきて、座っている時間がどうしても増えてしまいます。
患者さんと話していても、
・動きたくてもおっくう
・歩くと膝や腰が痛い
・じっとしている方が楽
・いつもだるい
・目的がないのに運動なんてできない
など、様々な理由で徐々に動く時間が短くなってしまうようです。加齢などにより筋力が低下し、さまざまな問題を引き起こすことをサルコペニアと言いますが、どうやら活動度の改善は血圧にもよい影響を与えている可能性があることが最近報告されました。
米国のクリニックに通院中の60~89歳で、かなりの肥満(BMI: 30~50)の方を対象に一日の活動度を加速度計で測定し、積極的に座っている時間を減らす群(積極介入群)と対象群とで比較し、半年程度経過を見て、血圧の変化を比較検討しました。積極的に座位時間を減らす群は介入期間中コーチングや座位時間の目標などを設定し、活動度を上げるよう心がけた結果、一日の座位時間を30分程度減らすだけで血圧が下がる(収縮期血圧: 約3.5mmHg程度の低下)可能性があることが示されました。
ただ、この研究は当初2656人が対象でしたが、実際に研究に参加したのは283人で、その時点でかなりバイアスがかかった可能性があること、積極介入群に割付られた段階で、食習慣などを含めた生活習慣が変わった可能性が否定できないことなど、研究としてはやや不確実と思われますし、研究対象がかなりの肥満度の方なので一般化できるのか?という素朴な疑問もあります。ただ、活動度のわずかな差が長い目で見た時、血圧に影響を与える可能性があるというところまでは言えそうです。
健康は目的ではありませんが、何かをしようとする時、やはり体は資本です。
丈夫な体を手に入れることはなかなか難しいですが、地味な努力は確実によい影響を与えるのではないでしょうか。皆さんもその一歩を今日から始めてみませんか。
引用文献
JAMA Network Open. 2024;7(3):e243234.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創