糖尿病治療薬は認知症発症予防に効果があるのか?

認知症発症と生活習慣病との関連は非常に強いとされています。高血圧や脂質異常症は適正な管理で、認知症発症をある程度予防できる可能性が言われています。しかしながら、糖尿病治療薬は肯定的な結果とそうでない結果があり、今のところ判然としません。そんな中で、最新の糖尿病治療薬に認知症予防効果の可能性が示されました。
26の良質な研究論文を抽出し、心疾患に有効な新規糖尿病治療薬と認知症および認知機能低下との関連をメタ解析しています。今回の検討では治療薬全般で見ると、認知症発症予防効果は認められませんでしたが、その中で唯一、GLP-1受容体作動薬だけは認知機能低下抑制効果を示すことができました。(相対リスク45%減少)
GLP-1受容体作動薬は昨今注目されている薬剤で、単に糖尿病を治療するのみならず、心疾患予防効果や一部の心不全例で症状改善が認められ、欧米のガイドラインで積極推奨になってきています。さらには食欲を抑える効果があり、減量も期待できることから非常に多面的で幅広いニーズに対応できる薬剤とされています。主に注射剤が用いられますが、内服薬もすでに市販され、新規薬剤の開発も進んできています。糖尿病のための注射剤という固定された概念から、肥満に対する減量、心不全および心疾患の予防や改善、さらには認知症予防の可能性など、広がりを見せています。
参考URL
https://nakameguro-cl.com/news/ninnchisyourishuku/
参考文献
JAMA Neurol. 2025 May 1;82(5):450-460.
J Am Coll Cardiol. 2025 Jun 10:S0735-1097(25)06481-2.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創