認知症と心房細動の関係
高齢化とともに認知機能低下や認知症を認める方が増えてきています。そんな中、認知症と心房細動の関係性も議論されるようになってきています。以前は心房細動の原因が加齢や高血圧、糖尿病など既知の認知症発症リスクと重なるため本当に心房細動と関係があるのかが不明でした。しかし、最近になり心房細動合併例で明らかに認知症リスクが増すことが証明され、認知症の原因として心房細動の重要性が認識されるようになってきています。
心房細動がなぜ認知症の原因になるのかは明確には分かっていません。脈が不整であることによる心拍出量の低下、それによってもたらされる脳血流低下や微細な脳血栓症などがその機序として考えられています。
血液をサラサラにし、脳梗塞を予防する抗凝固療法が認知症発症リスク低下に寄与するといった報告や、抗凝固薬の一つであるワルファリンのコントロールが不十分だと認知機能低下が進むなど、抗凝固療法の重要性が報告されていますが、実際どの程度効果があるのかは十分には証明されていません。
少なくとも言えることは心房細動の予防や適切な治療が認知症予防にもつながる可能性があるということです。
参考文献
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Eur Heart J. 2022 Feb 17;ehac020.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創