ストレスは心房細動の原因になる?
ストレスって難しい言葉です。眠れないのはストレスのせいか?とか、血圧が高いのはストレスのせい?なんて、外来でよく聞かれる会話です。ストレスと一概に言っても様々です。心的ストレスもあれば、身体的なストレスもあります。例えば、飲酒や喫煙は多幸感をもたらし心的にはストレスを軽減しているように思えます。しかし、身体的には飲酒や喫煙は様々な病気の原因になります。心的にはリラックスをさせてくれても身体的にはストレスになる、そんな意味です。ですので、ストレスという言葉はなかなかひとくくりにできない難しい言葉だということになります。
5年も前ですが個人的にとても興味深い論文が発表されました。
標準的(35~40時間/週)な労働時間に比べ、過重労働(55時間以上/週)を続けていると、心房細動の発症リスクが1.42倍増すというものです。長時間労働、いかにもストレスの代名詞です。ただ、この論文を読み進めるといくつかのポイントがあるようです。もちろん、労働時間が長ければ長いほど発症リスクは増すのですが、実際に内訳をみると、長時間労働をしている集団で肥満、運動不足、喫煙者の割合が多く、アルコール摂取量も多いなど、一定の傾向が認められました。また、興味深いことにうつや不安などの心的ストレスを抱えている人も多いということが分かりました。労働時間が長いから飲酒量が増え、精神的にもストレスを抱えてしまうのか、それともそのような傾向を持つ人のほうが労働時間が長くなりやすいのか、そのあたりはこの論文からはわかりません。ただ、心的であっても身体的であってもストレスであれば心房細動発症のリスクが増す可能性はありそうです。
ストレスのコントロールはとても難しいです。
私はいつも患者さんに『ストレスとうまく付き合う』ことを考えましょうと申し上げています。ストレスのない生活はありませんから、心だけでも身体(からだ)だけでもないリラックスさせる工夫を心がけるようにしたいですね。
参考文献
Eur Heart J. 2017 Sep 7;38(34):2621-2628.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創