心房細動治療で目指すべきものとは?
ネットで心房細動と検索すると、脳卒中予防、心不全予防が数多くヒットすると思います。確かにこのことは間違ってはいません。しかし、抗凝固療法が進歩し、新しい抗心不全薬やカテーテル治療などの先端治療が行われるようになり、徐々に異なる見方が必要になってきています。
図は心房細動の方がどのような原因で亡くなったかを調べたものです。報告により差異はありますが、注目すべき点がいくつかあります。
✓脳卒中や血栓塞栓症は全体の約5%程度であること
✓心不全や心筋梗塞などの心原性が無視できないこと
✓実際には非心原性が非常に多いこと
脳卒中予防の重要性が十分に認識され、抗凝固療法の主役がワルファリンからDOACに代わり、より安全・確実に予防ができるようになりました。このことは脳卒中予防の重要性が相対的に下がったことを示しています。
心房細動は徐々に心機能に悪影響をもたらします。心房収縮や律動的な心拍出ができなくなり長期的に心不全リスクが増すと考えられます。最近では、心房細動にともなう心筋障害や弁膜症の合併を包括する概念としてAtrial Cardiomyopathyとして考えるようになってきています。
心房細動患者に癌の合併が多いことは以前から知られていました。直接的な関連があるのかは不明ですが、非心原性の中には癌や感染症など、心臓とは直接関連がないと思われるものが多く認められます。
心房細動は心臓の病気です。しかし、その原因は加齢やライフスタイルなど、多様です。亡くなった原因から見ても心臓だけを見ていればよいというわけではありません。心房細動をきっかけにしっかり全体を診ていく姿勢が求められています。
参考文献
J Am Coll Cardiol. 2016 Dec 13;68(23):2508-2521.
Eur Heart J. 2016 Oct 7;37(38):2882-2889.
Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2019 Jan 1;5(1):35-42.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創