心房細動における抗凝固療法(血液サラサラ)の意義
各種報道などで心房細動の併発症としての心原性脳塞栓症予防の意義はかなり知られるようになりました。そこで、一般の方に知っておいてほしい知識について簡単にまとめたいと思います。
✓高血圧、糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症などの予防・治療、禁煙や節酒の重要性
脳卒中にはいくつかの病型(タイプ)がありますが、いかなるタイプであったとしても生活習慣病の予防・治療や禁煙、節酒は重要です。
✓心房細動に伴った脳梗塞(心原性脳塞栓症)の病後経過(予後)は非常に悪い
他の病型に比べ、機能および生命予後が不良です。いったん発症すると、リハビリによる回復も十分には期待できず、数年で半数程度の方が亡くなります。
(報告により異なります)
✓適切な内服薬で約70%程度予防できる
しっかり内服すれば約70%程度予防が可能です。しかし、心房細動に伴う脳梗塞を予防できる薬は種類が限られています。(以下の5種類のみ)
エリキュース、イグザレルト、リクシアナ、プラザキサ、ワルファリン
✓生活習慣の改善だけで予防はできない
いったん心房細動を発症すると、生活習慣の改善だけで脳卒中の予防は困難です。適切な投薬を検討しなければいけません。
✓80歳以上の高齢者であっても適切な投薬を行えば、効果的に脳梗塞を予防できる
日本からの報告で、約65%程度脳卒中を予防できることが証明されました。一般に血液サラサラを行うと出血が心配されますが、事前に出血リスク(しやすさ)を見積り、適切な投薬を行うことが必要です。
参考文献
Ann Intern Med. 2007 Jun 19;146(12):857-67.
N Engl J Med. 2020 Oct 29;383(18):1735-1745.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創