2023年10月03日 からだの情報

過ぎたるは及ばざるがごとし?

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心房細動という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。心臓の中に血栓ができて、その血栓が脳梗塞の原因になる、とても怖い不整脈です。
(過去、からだの情報で心房細動にファーカスしていますので、ご参考にされてください)

脳梗塞予防は確立していて、血液をサラサラにする抗凝固薬を内服すれば、約7割程度そのリスクが低下することが分かっています。どのような方が内服の適応になるか?は加齢や高血圧、糖尿病、心不全などの既往がある方は積極的に考慮する必要があるとされています。

心房細動は発作の持続時間や治療への反応性から、発作性、持続性、永続性など、いくつかに分類されています。ただ、その中には月に1度数分程度の発作の方もいるでしょうし、半年に一度程度の発作頻度の方もいると思います。最近になり、心房細動は早期検出というのが一つのトレンドになっていて、スマートウオッチや従来型の血圧計に心電計の機能が実装されていたり、ご自身で脈の管理もできる時代になってきています。

では実際、どの程度の発作時間から問題になるのでしょうか?過去、論文ではペースメーカー植込み患者のデータを解析し、おそらく心房細動と思われる不整脈が6分以上持続すると、脳卒中リスクなどが上昇することが分かっていました。この結果を踏まえれば、脳梗塞という重篤な病気とすでに確立された内服薬の効果を考えれば、早めに予防を行った方が当然よいように思えます。

最近になり発表された論文ではまさにこのギモンについて検証が行われました。平均78歳を対象に検証が行われ、心房細動と思われる不整脈イベント(AHRE:atrial high rate event)を有する患者を対象に抗凝固療法を行った群とプラセボ群とで比較し、その後の心血管死亡、脳卒中頻度、塞栓の有無、そして重篤な出血やそれにともなう死亡が検討されました。

しかし、試験開始後、想定外の結果で早期に試験が終了になりました。

 

抗凝固薬を内服している群では脳卒中頻度など、予防すべき有害事象を思うように減少させることができず、逆に出血などが増加していました。もともとのAHREがペースメーカーなどのデータに基づくものであったこと、AHREが実際には心房細動ではない可能性、脳卒中などの頻度が予測されていたほど多くなかったことなど、様々な要素が働いていると思われますが、早期の予防的介入が思ったほど効果的ではないばかりでなく、むしろ有害である可能性が示唆されました。

実は最近、心房細動は早期に治療介入すべきというのが世界的な流れになりつつありますが、今回の検証結果はその流れに一石を投じるものであり、心房細動の治療閾値を進化した現代医療において再定義する必要性を確認させられたと言えそうです。

参考リンク先と参考文献

心房細動における抗凝固療法(血液サラサラ)の意義


N Engl J Med 2012; 366:120-129
N Engl J Med 2023; 389:1167-1179

 

 

 

中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創

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