自己血圧測定だけでなく、自己心電図記録の時代へ
ふと思い起こすと、一昔前までは自己血圧測定の重要性は今ほど語られていませんでした。今では自身で測った血圧値をもとに生活指導や内服調整が行われることが普通になっています。
最近まで脈拍はどちらかというと血圧測定のオマケのような存在で、その意義についてはあまり注目されてきませんでした。ましてや心電図は病院で、というのがつい最近までの常識であったと思います。ところが、血圧計に心電図記録機能が付加されたり、スマホやスマートウオッチで簡単に脈拍や心電図が記録できるようになり、一気に注目されるようになってきています。
実際、私が拝見している患者さんの中で、スマートウオッチで得られた心電図記録から不整脈を診断、その後の治療に活かすことができた方は増えてきています。海外でも盛んに臨床応用されてきており、その意義が論文化されてきています。
最近発表された論文をご紹介したいと思います。心房細動のカテーテル治療(カテーテルアブレーション)を受けると術後3か月間はブランキングと言って、治療による炎症から心房細動が逆に生じやすい期間があり、その時期に生じた心房細動と術後再発との関係について過去多くの検討がされてきました。今回行われた研究では、1回/日、症状があるときにスマホで心電図記録を取り、記録された心房細動の合計頻度(burden)と再発について関連性が検討されました。結果は術後3か月間に心房細動の頻度が多ければ多いほど、心房細動再発頻度が高いというものでした。医療機関で行われる心電図検査では通常のホルター型で24時間、長時間連続記録型でも2週間程度と制約があります。特に3か月間のような長期となるとスマホなどの手軽な機械で記録していくことが現実的と思われます。
血圧測定が診察室血圧から家庭血圧に変わっていったように、心拍についても自身で記録し、その結果をもとに診断・治療に活かす時代が間近に来ていると思われます。まさに自己心電図記録時代の到来です。
参考URLおよび文献
https://nakameguro-cl.com/news/applewatch/
https://nakameguro-cl.com/news/sphygmomanometerwithelectrocardiograph/
J Am Coll Cardiol EP. 2023 Oct, 9 (10) 2085–2095
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創