今話題の“あのウイルス”について解説します
インフルエンザが猛威を振るう中、中国で流行し、一部報道で話題になっている感染症があります。“ヒトメタニューモウイルス”はRSウイルスなどと並び、感冒様症状の原因となるウイルスで、決して珍しいものではありません。このウイルスは2001年に発見されました。
いわゆる感冒様症状(呼吸器感染症)を引き起こすウイルスはインフルエンザ、パラインフルエンザ、コロナ、アデノ、ライノ、RSなどが有名ですが、ウイルス遺伝子(一本鎖RNA)はRSに最も似ており、臨床症状もかなり近いとされています。主に小児の感染症として有名で終生免疫が得られないため繰り返し感染する可能性があります。ほとんどの場合、上気道(感冒)症状のみで1週間程度で軽快しますが、小児の一部や免疫不全者、高齢者、何らかの基礎疾患を有する場合、下気道症状(喘息様気管支炎・肺炎)を合併することがあるとされています。このあたりはインフルエンザや新型コロナなどと同様です。成人の呼吸器感染症の数%程度はこのウイルスが原因とされています。
感染経路:飛沫(咳、くしゃみ)、接触感染
潜伏期:3~6日間程度
ウイルス増殖期間:感染後数日から始まり、1週間程度がピーク、最大2週間程度持続
流行期:冬から春にかけて
予防法:マスク着用や手洗い、換気など、コロナウイルスと同様
症状:発熱、咳嗽、鼻汁、呼吸困難感などの感冒様症状
診断:流行性感冒の原因ウイルスであり、積極的診断は一般に必要なし
抗原検査:チェックhMPV(Meiji Seikaファルマ)を本邦では使用可能で、PCRと比較し、感度は約80%程度
治療:抗ウイルス薬などはなく、対症療法のみ
ワクチン:有効なワクチンなし
現在、中国で流行しており、世界各国がその動向を注視しています。新型コロナ感染症の際と同様、成人での重症化率がどの程度か?が最も注目すべきポイントになります。現在、我が国ではインフルエンザが流行していますが、今後インフルエンザとコロナ、そしてヒトメタニューモの同時流行が懸念されます。
いずれにしても、コロナ禍で得た『周りへのちょっとした気遣い』が大切のように思います。当院ではコロナでの経験をもとに医療機関そのものが感染症の温床にならないよう、感冒様症状、胃腸炎症状の方と一般の方との診療を分けて拝見しています。引き続き診療へのご協力をよろしくお願いいたします。
参考URL
https://www.cdc.gov/human-metapneumovirus/about/
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/increase-respiratory-infections-china
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/human-metapneumovirus-(hmpv)-infection
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創