コレステロール治療の新たな福音

前回の『からだの情報』は認知機能低下の危険因子についてお伝えしました。生活習慣病とされる脂質異常症、特に高LDL血症(悪玉コレステロールが高い)も重要であるとされています。もうすでにコレステロールの薬を内服中の方もいらっしゃると思いますが、その中で世界的に最も使用されているのがスタチン系薬剤です。LDLコレステロール低下作用が強いだけではなく、狭心症などの心疾患予防も証明されている優れものです。
ただ、お薬ですのでこれまで様々な問題点が指摘されてきました。特に、内服を検討している方からよく聞かれるのは『認知症との関係』です。確かに、研究結果により影響の可能性があるないなど、結論が出ていませんでした。ですので、予防薬として長期に内服することを考えれば不安になるのも当然かもしれません。
以前から実はスタチン系薬剤は神経保護採用があると考えられていましたが、決定打となる研究結果が得られていませんでした。そのような中、最近発表された論文ではスタチン系薬剤の認知機能低下に対する効果が確認されました。過去発表された50以上の論文(700万人以上が対象)を統合解析(メタ解析)し、スタチン系薬剤と認知症リスクとの関係について検討が行われました。結果、内服群では認知症リスクが約14%低下、アルツハイマー病は約18%、脳血管認知症では約11%程度低下させ、内服期間が長ければ長いほどその効果が強いというものでした。さらにアジア人ではその効果がより顕著であったと報告されています。このようなメタ解析での評価はこれまでの議論に一石を投じる、まさに福音とも言えるものではないでしょうか。
誰もがサプリのように内服する必要はないと思います。ただ、必要な方はしっかり内服する、それは将来の様々なリスクを下げる非常に大切なことだと思います。
参照URL
Alzheimers Dement (N Y). 2025 Jan 16;11(1):e70039.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創