抗生物質はがんの原因になる?
日本人がなりやすい『がん』と言えば、肺がん、大腸がん、胃がん、さらに男性なら前立腺がん、女性なら乳がんが問題になると思います。特に、大腸がんや乳がんは食の欧米化が原因の一つと言われていますが、もしかすると、若いころのちょっとしたことが成人以降のがん発生に影響があるかもしれません。
最近発表された論文では、幼少期に年3回以上抗生物質の投与を受けると、その後の成人期での大腸がん発生の危険性が1.48倍になるというものでした。抗生物質と大腸がん、この二つが関係するの?と素朴に思われる方もいると思います。そのメカニズムはあまりよく分かっていませんが、腸内環境の変化が一因では?と考えられています。それならば、今流行りの『腸活』をすればいいじゃないか?と思われる方もいると思います。腸活はプロバイオティクスと呼ばれ、腸内細菌環境を整えることを目的としていますが、実はプロバイオティクスを積極的に支持する報告は少ないのが現状です。
がんの原因の多くは未だによく分かっておらず、非常に多面的であるとされています。確かに遺伝子検査を行えば、ある程度の傾向はつかめるかもしれませんが、ちょっとした些細なことがその後に影響する、なんてことも実際にはありそうです。
風邪をひいた患者さんが来院されると一部の方から抗生物質処方の希望があります。ただ、このような抗生物質の濫用ががんのリスクになる可能性があるなら、不要なクスリを避けることもやはり大切だと思います。
参考文献
Int J Cancer. 2023 Jul 28. doi: 10.1002/ijc.34648.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創