2025年06月02日 からだの情報

やせ薬のガチンコ勝負 結果は如何に!

注射剤の『やせ薬』については聞いたことがある方も多いと思います。美容のための痩身と異なり、肥満は生活習慣病や無呼吸症などの原因になり『万病のもと』ですから、世界的にも『病気』としてとらえ積極的に治療する傾向になっています。

医療で用いる抗肥満薬には複数ありますが、最も注目されているのはGLP-1受容体作動薬でしょう。この薬剤は糖尿病治療に用いられますが、同時に食欲を抑制し、体重を減少させる効果があります。このGLP-1受容体作動薬の中で、抗肥満薬として日本も含め欧米でも認可されているのが、セマグルチド(ウゴービ®)とチルゼパチド(ゼップバウンド®)です。いずれも週1回の皮下注射でその効果を発揮し、すでに自己注射を行っている方もいらっしゃると思います。そんな2剤ですが、減量効果はどちらがより強いのでしょうか?また、その安全性はどうなのでしょうか?このような素朴な疑問に答えた臨床研究(SURMOUNT-5試験)が最近発表されたのでご紹介したいと思います。

糖尿病がない肥満者(Body Mass Index:平均約39*)を対象にチルゼパチド10もしくは15mg、セマグルチド1.7もしくは2.4mgを週1回投与し、その後の体重減少と副作用の頻度について追跡しました。投与後72週間で、チルゼパチド群は20.2%の体重減少、対してセマグルチド群は13.7%の減少にとどまりました。いずれも体重減少という意味では劇的な効果ですが、その効果はチルゼパチド群で顕著でした。薬剤独特の副作用である吐き気(約44%)、下痢(約23%)、便秘(約28%)は高頻度に認められましたが、両群で差は認めませんでした。

肥満に対しては食事や運動などの一般的な生活指導だけではなく、胃の容積を小さくする減量手術など、様々な試みが行われています。本邦では欧米と比較し、肥満に対するアプローチはやや後手の印象もあり、より積極的な介入が必要と思われます。その中で、今回ご紹介した薬剤はその中核を担うものです。どちらの薬剤も非常に優れており、積極的に臨床で使われています。適切な方に適切な治療が行なわれるよう、正しい知識を持っている医療機関を受診されてください。

*Body Mass Index(BMI):39は身長170㎝の場合、体重115㎏程度になります

参考URL
N Engl J Med. 2025 May 11. doi: 10.1056/NEJMoa2416394.

 

中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創

注意事項

発熱、風邪症状、下痢、咳などのご症状が
ある方は、WEBからのご予約はできません。
必ずお電話でご連絡ください。

※ご来院時はマスクを着用ください。
※当院の診療は一般成人の方が対象です。

上記注意事項をお読みいただきましたら、
[WEB診療予約]へお進みください。

WEB診療予約

閉じる