2024年03月19日 からだの情報

今話題の“あの”クスリについて解説します

大正製薬から減量目的の市販薬(OTC医薬品)の販売が始まることは様々な広告でご覧になった方もいらっしゃると思います。その名も“アライ(Alli)”といいます。アライ(Alli)は荒井や新井など、日本名由来ではなく、海外ですでに使われている商品名です。

では、このアライについて解説したいと思います。アライ(Alli)の主成分はオルリスタット(Orlistat)というもので、すでに1999年から世界的に認められている減量目的の薬剤になります。オルリスタットは膵臓から分泌される脂肪分解酵素リパーゼの働きを抑え、約30%程度、脂肪吸収を抑制します。その結果、摂取エネルギー制限による減量効果が期待できるというものです。食欲は維持されるので、並行して食事制限や運動を行うことで効果が高まるとされています。

効能効果についてはすでに諸外国で様々な検討がなされ、おおむねオルリスタットを内服すると数年で体重が数%程度減ることが報告されています。また、劇的な効果ではありませんが、脂質異常症や高血圧の改善、糖尿病の発症予防、脂肪肝の改善など副次的な効果も期待できます。ただ、多くの諸外国のデータは平均体重100㎏程度の方を対象にした研究が多く、日本人でどの程度リアルな効果が認められるかはまだ分かりませんが、肉やお菓子、乳製品など、脂肪分の多い食事を好む方にとってはよい選択肢になるかもしれません。

また、欧米のデータでは120mgを3回/日内服しているものが多く、今回内服可能な60mg錠を3回/日内服する場合とではやや効果が劣る可能性があることも知っておく必要があると思います。

体内に吸収されることがほとんどないので重篤な副作用はありませんが、脂肪吸収を抑えるため、下痢、脂肪便、下着にちょっとした際に便がつきやすくなるなど、生活上の工夫は多少必要になると思います。唯一注意すべき点は脂肪が消化される過程で体内に吸収される脂溶性ビタミン(A, D, E, K)が不足する可能性があるためサプリメントなどで補充する必要があるかもしれないとされています。

いずれにしても、選択肢が増えることは朗報ですし、うまく使えばそれなりの効果が期待できるはずです。ご興味ある方は薬剤師のいる薬局でご相談ください。

参考文献
JAMA. 1999 Jan 20;281(3):235-42.
Obes Res. 2000 Jan;8(1):49-61.
JAMA. 2016 Jun 14;315(22):2424-34.
J Am Coll Cardiol. 2018 Jan 2;71(1):69-84.
Diabetes Metab J. 2020 Dec;44(6):802-818.
World J Mens Health. 2021 Apr;39(2):208-221.
Biomed Pharmacother. 2021 Aug:140:111789.
Am J Clin Nutr. 2023 Apr;117(4):691-700.

 

 

中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創

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