血圧は低いほどいいけど・・
前回のからだの情報は高血圧における降圧療法の目標値についてお伝えしました。実際、過去多くの研究・論文ではより積極的な降圧で前向きな結論が得られていることが多いです。
今回はその中で最も新しい研究論文をご紹介したいと思います。
11255人の方を対象に収縮期血圧140mmHg未満を目指す標準治療群(5631人)と120mHg未満を目指す積極的治療群(5624人)に分け、約3年半経過観察し、その間の心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管疾患による死亡率などを比較評価しています。
結果ですが、積極的治療群で有害事象が約12%程度減少し、やはりここでもより強い降圧で前向きな結果が得られました。ただ、有害事象の数を見ると、標準治療群は全体の3.6%、積極的治療群では3.2%とわずかな差で統計学的には有意であっても個人のレベルで見た場合の有効性に関してはギモンを感じざるを得ないと思います。
最近の降圧療法のトレンドは確かに“必要にして十分な降圧”ですが、本当に一人一人の方にとってメリットがあるのか?について冷静に考える必要があります。いわゆるエビデンスとしてこのような研究・論文は確かに重要ですが、そのエビデンスを分かりやすく伝えることも大切です。数字が独り歩きしないよう、様々な意味でバランスのとれた中庸な治療が我々には求められています。
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創