運動と心房細動の関係
運動不足は様々な病気と強く関連しています。肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病だけでなく、認知機能低下やがん発症との関連を示唆するような報告もあるくらいです。高齢者だけではなく、若い方にも運動不足は慢性的な問題点と言えそうです。もはや、現代人が共通に抱えた悩みとも言える『運動不足』、少しずつでよいので、改めて自身の習慣を見直したいものです。
一見すると、心房細動と運動とは全く関係がないように思われます。実は、過去多くの報告で適度な運動習慣が心房細動発症リスクを減らすことが報告されています。運動習慣は心房細動の原因である高血圧や糖尿病、肥満などを改善します。ただ、それだけではなく自律神経バランスを整え、良質な睡眠が得られるなど、目に見えない変化を体にもたらします。このような地道な継続が心房細動発症リスクを低減させると考えられています。
しかし、過度な運動は心房細動発症リスクをむしろ高める可能性が示唆されています。過度な運動は炎症を惹起し、左心房線維化を促進するなど直接的な変化を心臓に与えます。マラソンやトライアスロンのような非常に負荷の強い運動については要注意と言えるでしょう。
ただ、多くの方はそもそも運動習慣がないことが多いですから、まずは隣の駅まで歩いて帰る、そんな手軽なところから始めてみてはいかがでしょうか?
参考文献
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中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創