自身でチェックできる病気の兆候:耳たぶの筋で狭心症が診断できる?
身体診察(身体所見)は聴診器で胸の音を聞く、ということだけではありません。先人たちの詳細な観察や知見から、視診(見た目)によって様々な病気の兆候に気づくことが可能になっています。
狭心症や心筋梗塞という言葉を聞いたことがあると思います。狭心症は心臓を栄養する冠動脈が動脈硬化をきたし、それに伴って心臓の栄養が不足することであり、栄養不足が突然起こり、心臓が壊死することを心筋梗塞と言います。いずれも心臓病の中ではとても重要で重篤な疾患です。そんな心臓病が耳を見るだけで予見することが可能だとしたら、驚くべきことだと思いませんか?
耳たぶにできた“すじ”と狭心症、心筋梗塞の関連が世界ナンバーワンの臨床医学雑誌であるThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに1973年に初めて報告されました。日本語で適切な言葉はありませんが、その所見は『Aural sign』『Frank sign』『Ear lobe crease』と呼ばれ、今でも重要な身体所見とされています。
周囲を見ていただければ気づくと思います。若い人の耳たぶに筋がある人はまずいないと思います。それに反し、高齢者ではかなりの頻度でこの筋に気づくと思います。この耳たぶの筋は動脈硬化を反映しているとも言われていますが、働き盛りの年代で認められた場合、要注意と言えるでしょう。
ご家族や周囲の方で耳たぶに“すじ”がある方はいませんか?
生活習慣病や動脈硬化、狭心症や心筋梗塞などの心臓病を予防できるきっかけになるかもしれません。
参考文献
N Engl J Med. 1973 Aug 9;289(6):327-8.
Circulation. 2014 Mar 4;129(9):990-8.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創