運動不足で心臓もなまけものに?
適度な運動はQOL(生活の質)を向上させ、生命予後を改善することが知られています。
特に生活習慣病や心疾患ではその効果は顕著です。
運動は心臓を適度に大きくし、しなやかな心筋に変化させ、結果として心臓から送り出される血液の量が増し、いわゆる心肺機能の改善をもたらすことが分かっています。
その逆に運動不足は徐々に心臓を委縮させ、小さく硬い心筋になり、心不全の原因になる可能性が指摘されるようになりました。このように変化した心臓は一見収縮力も保たれ、問題がないように見えることがあります。
心不全というと心臓の収縮力が低下した状態を想像しやすいですが、一見収縮力が保たれていても、心不全に至る病態(HFpEF: Heart Failure preserved Ejection Fraction)があることが分かっています。
(https://nakameguro-cl.com/news/heartfailure-5/)
運動不足や体力低下と心不全の発症については有意な関連があることが過去の研究で証明されています。一方、運動そのものが心臓のしなやかさを回復させることも報告されています。特筆すべきは就労世代から初老期、また高齢者であっても改善させる可能性があることです。
食事、減量、睡眠、クスリなど・・・健康に関連するキーワードはたくさんありますが、運動ほどすべての人にあてはまるものはないと思います。
運動こそ、生涯にわたる最高の処方箋なのです。
参考文献
J Am Coll Cardiol. 2022 Sep 20;80(12):1177-1191.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創