2023年09月07日 からだの情報

新たな認知症の治療薬とは?

最近、メディアで注目されている認知症治療薬をご存じでしょうか?
『点滴で治る』とか
『画期的治療』と言われていると思います。
まず、この治療薬を理解するためには、ちょっとした事前の勉強が必要になります。

以前から認知症の一つである、アルツハイマー型認知症の原因として脳内にアミロイドβという異常蛋白が蓄積すること(アミロイドβ仮説)が言われてきました。
何故、アミロイドβが蓄積するのかについてはあまりよく分かっていませんが、今回注目されている治療薬はアミロイドβの前段階であるプロトフィブリルと抗体(抗アミロイドβプロトフィブリル抗体:レカネマブ)を結合させて除去するというものです。

この薬剤は日本のエーザイと米国のバイオジェンが共同開発したもので、日本人としては本当に誇らしく思うのですが、実際どの程度の効果が認められたのでしょうか?
すでに、世界ナンバーワンの医学雑誌でその効果が報告されていますので、一部を解説したいと思います。本研究では早期アルツハイマー病の患者を2群に分け、レカネマブ投与群と非投与群でその後の認知機能低下の程度が評価されました。臨床認知症評価尺度(Global CDR)は8割が0.5、残りの2割が1というごく軽度の認知機能低下の方を対象にしており、この点は日本で実際に治療が始まる上でポイントになると思います。

ちなみにGlobal CDR0.5~1というと、記憶障害はあるが比較的判断力が保たれており、複雑な家事などができなくなりつつある状態で、そろそろ介護が必要かな?と考えられるレベルのものです。このような状態の方にレカネマブを投与することで1年半ほど比較して、レカネマブ投与群が約7カ月程度、非投与群に対し認知機能低下の進行を遅らせることができるという結果が得られました。認知症が治るのではなく、あくまでも進行抑制であるということが2つ目のポイントになると思います。

また、本剤は大変高額です。米国では月2回の点滴治療で年間300~400万円程度かかるとされており、皆保険である日本で、どの程度の負担額になるのか?この点も問題だと思います。

参考文献
N Engl J Med 2023; 388:9-21

 

中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創

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