心房細動とアルコールの関係
心房細動の発症と悪化には大きく分けると3つの要素が考えられます。
・年齢:加齢とともに発症率が高まります
・生活習慣:肥満、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症、喫煙、飲酒、運動不足など
・遺伝的要素:先天的な要素もある程度は存在すると考えられています
アルコールは古くは『百薬の長』と言われていました。実は1合/日 程度までのアルコール量であれば、心筋梗塞や脳卒中などの血管疾患に予防的に働くことが分かっています。しかし、同じ心疾患の中でも心房細動はまったく別で、以前から『Holiday heart syndrome』と言われ、最近ではごく少量の飲酒から発症の危険性が増すことが分かっています。アルコールは肥満や高血圧、睡眠時無呼吸症などを悪化させるのみならず、自律神経にも作用します。さらには心臓の組織自体を変性させ、不整脈を生じやすくします。飲酒と不整脈発作との関連は強く、一時的な大量の飲酒(飲み会)で発作が生じやすいことも証明されています。
このようにアルコールと心房細動の関係は密接ですが、禁酒することで改善することも分かっています。ただ、アルコールは人とのつながりを深め、ストレスを発散することができるなど、プラスの要素もあります。長く楽しくアルコールと付き合うことができるよう、うまく加減しながら飲むように心がけてください。
*アルコールは1合/日 程度までであれば、血管疾患には予防的に働きますが、がんなどの他の疾患を含めると、ごく少量の摂取から体には良くないことが分かっています。
*スタンダードはアルコールの標準単位として各国で使われています。諸外国で基準は異なりますが、おおむねアルコール10グラム/スタンダードになります。
1)J Am Coll Cardiol. 2016; 68 : 2567-2576.
2)Nat Cardiovasc Res. 2022; 1: 23–27.
3)Ann Intern Med. 2021; 174: 1503-1509.
4)N Engl J Med. 2020; 382: 20-8.
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創