心不全の病期(ステージ)分類からわかること
前回、心不全の定義からわかることについてお伝えしました。
心不全は心機能に異常を来たし、ポンプ機能が破綻することで様々な症状が生じます。心不全は徐々に進行する病気ですが、突然始まるわけではありません。実際には心不全と診断される前がとても重要で、心不全にならない努力が求められます。
現在、世界的に心不全の病期(ステージ)を4つに分けてアプローチすることが推奨されています。
ステージA
なんらかの病気があるが、心臓には問題がない、BNPなどの血清マーカーにも異常がない状態。高血圧や糖尿病がある、心筋症の家族歴があるなど、将来的に心機能に異常を来たす可能性がある状態。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理、心筋症の家族歴を有する方のフォローアップなど、地道な努力が求められます。
ちなみにBNP、NTpro-BNPとは心臓から分泌されるホルモンで心不全の診断や状態を把握するために用いられます。
ステージB
心不全の症状はないが、心臓に何らかの問題があり、心不全準備段階とも言える状態を言います。
心筋梗塞後や心筋症の診断を受けている、弁膜症があるなどの器質的心疾患を有する状態やBNPやトロポニンなどの血清マーカーの上昇などを言います。充満圧上昇は身体所見に始まり、心臓超音波検査などで血行動態が不安定になっている状況が客観的に認められる状態で、ステージBではしっかりとした管理、投薬が求められます。
ちなみにトロポニンは心筋の構成要素で、その上昇は心筋傷害を示唆します。
ステージC
息切れやむくみなどの症状がある状態を言います。定義上の心不全はステージCおよびDで、ステージCからDへの移行を防ぐことがとても重要になります。背景となる心疾患の適切な診断と状態の把握、疾患特異的な治療など状態に準じた治療戦略が求められます。
ステージD
適切な薬物治療にも関わらず、症状がコントロールできない、入退院を繰り返す状態を言います。追加できる治療がないかなど検討したり、背景により心移植や左室補助装置を考慮します。最終的には緩和医療を選択することもあります。
このように見ていくと、できるだけ早い段階での介入が重要であることがお分かりいただけると思います。高血圧などの生活習慣病のない方は、高血圧や糖尿病にならない、肥満があれば適切に減量するなどの努力が必要であることが分かります。
ステージAにならないようにすることが実際には最も重要ですので、自身の生活習慣の見直しを行ってはいかがでしょうか?
参考文献
2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure
中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創