2022年12月09日 からだの情報

高血圧診療の難しさを長期内服から考えます

comoro 中目黒イメージキャラクター

高血圧に対する降圧療法(内服)の目標値について、どこまで下げるのがベストなのか?はいまだはっきりしません。

まず、最近の高血圧治療に強いインパクトを与えた臨床試験について解説したいと思います。2015年に論文発表されたSPRINT試験は心血管病の高リスク患者(糖尿病と脳卒中になったことがある方を除く)を対象(9361例)に厳格に血圧コントロールを行った群(<収縮期血圧120mmHg)と一般的な血圧コントロールを行った群(<140mmHg)を比較し、心筋梗塞や脳卒中、心不全などの予防効果について検討を行いました。3.26年(中央値)検討が行われ、厳格に血圧コントロールを行った群の方が一般的なコントロールを行った群に比べ、約25%程度心血管病を減らすことが分かりました。そして、SPRINT試験発表後、より厳格なコントロールが好ましいのでは?と考えられるようになりました。

しかし、高血圧の内服治療は数年から数十年継続することが普通です。内服治療は病気にならないための予防治療ですから、長期にわたって安全かつ十分な効果があることが求められます。ですので、このSPRINT試験の結果が長期に担保されるのか?はとても興味深いところです。

先日、SPRINT試験終了から4.5年後の長期成績が論文化されました。結果は驚くべきことに厳格コントロール群と一般的なコントロール群で心血管疾患予防効果に差がないというものでした。ただ、試験終了後、しっかりとコントロールできていたのかが不明なことなどもあり、本当の意味で長期的な効果があるのかないのか?については結論が出ていません。

ただ唯一言えることは、十分に吟味された臨床試験の結果をそのまま臨床に反映させ続けることの難しさを証明した、ということは言えると思います。

参考文献
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2103-16.
JAMA Cardiol. 2022 Nov 1;7(11):1138-1146.

中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創

注意事項

発熱、風邪症状、下痢、咳などのご症状が
ある方は、WEBからのご予約はできません。
必ずお電話でご連絡ください。

※ご来院時はマスクを着用ください。
※当院の診療は一般成人の方が対象です。

上記注意事項をお読みいただきましたら、
[WEB診療予約]へお進みください。

WEB診療予約

閉じる