2022年10月21日 からだの情報

サプリメントもしっかり考えて内服しましょう

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サプリメントと言えば、ドラッグストアーで所狭しと並べられ、新聞雑誌、テレビ、ネットなどで毎日のように取り上げられています。医師の立場で言うと本当に必要と思われるものから???なものまでいろいろありますが、今回はビタミンDにフォーカスを当ててみたいと思います。

ビタミンとは様々な代謝、機能維持に必要な経口摂取すべき栄養素ですが、その中でもビタミンDは異質で体内で合成され、構造的にもステロイドホルモンの一種であることが分かっています。

ビタミンDというと年配の方は『肝油』を思い浮かべるのではないでしょうか?サメなどの魚類の肝臓抽出物である肝油はビタミンDをはじめとする様々な栄養素を豊富に含む補助食品として戦前戦後そして最近になるまで重用されてきました。そんなビタミンDですが、いったいどのような働きがあるのでしょうか?

ビタミンDはD2~D7までの6種類あります。その中で生理活性を持つ重要なものはD2とD3になります。ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることで生成されるものですが、食品から摂る場合、青魚や鮭に豊富に含まれており、特にD2はシイタケやマッシュルームなどキノコ類に豊富です。D2とD3の生理活性はほぼ同等とされていますが、肝臓と腎臓で活性型に変換され、主にカルシウム代謝や骨の正常化に重要です。また骨代謝に影響するのみならず神経や筋肉の働きを正常化するとされています。

ビタミンDはサプリメントとしてがん、心血管疾患、糖尿病、骨折、認知機能の低下、うつ病など、様々な予防効果があるのではないかとされてきました。実際、この記事を読んでいる方の中でもマルチビタミンやビタミンDを内服している方も多いと思います。過去、多くの論文で健康へ寄与する可能性が報告されてきました。

ただ、最近になり一石を投じる論文が世界ナンバーワンの臨床医学雑誌で発表されました。

VITAL試験は心血管疾患やがんの既往のない米国の成人男女25,871例(平均約67歳)を対象にビタミンD3を2,000 IU/日,魚油由来のn-3系(オメガ-3)脂肪酸を1 g/日内服し、約5年程度観察し、がんなどの発症頻度を比較しました。ビタミンD欠乏の人は含まれず、試験はバイアスがかからない(二重盲検化)ようにデザインされました。結果はがんによる死亡はビタミンD投与群でやや低い傾向でしたが、発症そのものに差はなく、骨折の頻度も変わりませんでした。

骨粗しょう症の方に対するビタミンD内服とは異なり、サプリメントとして『より健康』を目指したビタミンDの効果は限定的であることが分かりました。このことはビタミンD内服を完全に否定するものではないですが、普通の生活を送っている私たちにとって『上乗せ効果』を期待したサプリメント内服は慎重に考えた方が良いようです。

サプリメントというのは本来不足している、もしくは不足しがちな栄養素を摂取することですから普通に生活を送っている私たちにとって本当に必要なサプリメントは限られたものなのかもしれません。

参考文献
N Engl J Med. 2019; 380: 33-44.
N Engl J Med 2022; 387:299-309

 

中目黒診療所 内科・循環器内科
院長 西原崇創

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